歯周病は歯を失う原因で最も多い病気で、抜歯原因のおよそ4割を占めています。この割合はさらに年齢を重ねるほど多くなり、50代以降ではその半数以上を歯周病が占めています。
歯周病ってどんな病気?
歯を失う原因の第1位は歯周病
歯周病は「沈黙の病」
歯周病では原因となる歯周病菌が歯ぐきに感染したあと、やがて歯を支えている骨(歯槽骨:しそうこつ)が破壊されていきます。
歯周病の恐ろしいところは、ある程度病状が進行するまで大きな症状があらわれにくいことです。そのため気づいた時には多くの骨が破壊され、「すでに手遅れだった」ということも歯周病においてはめずらしくありません。このため歯周病は「沈黙の病(サイレントディジーズ)」と呼ばれています。
歯周病は全身の病気にも悪影響を及ぼす
歯周病はお口の中の問題にとどまらず、全身の病気にも悪影響を及ぼすことが近年の研究によって明らかになっています。
動脈硬化・心筋梗塞・脳卒中
歯周病の原因菌が歯ぐきの血管から全身の血管へ運ばれると、その細菌の刺激によって動脈硬化を誘発することがわかっています。さらに動脈硬化の悪化によって、心筋梗塞や脳卒中のリスクを高めることが指摘されています。
糖尿病
糖尿病によって歯周病が悪化することは以前より知られていましたが、近年は歯周病が血糖のコントロールを妨げ、糖尿病を悪化させることが明らかになっています。
実際に糖尿病のある方が歯周病の治療をおこなうと、血糖値が改善されたと様々な研究で報告されています。
早産・低体重児出産
妊婦の方の歯周病は、早産(妊娠37週未満の出産)や低体重児出産(2500g未満の出産)のリスクが高くなることがわかっています。
そのリスクは通常時の7倍にもなるという報告もあり、これはタバコやアルコールよりも高い倍率となっています。
歯周病の治療
ブラッシング指導
歯周病菌は「プラーク」とよばれる細菌の集合体の中に生息しています。歯周病の改善や予防では、このプラークをお口の中からできるだけ排除するプラークコントロールが基本となります。そのうち患者さん自身におこなっていただくプラークコントロールが、ご自宅での毎日の歯磨きです。
そこで歯周病治療ではまず、プラークを効率よく落とすブラッシングの方法や、歯間ブラシ・デンタルフロスなどの補助清掃器具の使用法などを丁寧に指導していきます。
スケーリング
お口の中でプラークが長く放置されると、唾液の成分によって固まり「歯石」になります。ザラザラした歯石の表面は歯周病菌のすみかになりやすいため、歯周病治療ではプラークとともにこの歯石もすべて取り除くことが重要です。
スケーリングでは歯ぐきより上に付着した歯石を、専用の機器や器具を使用しながら細かく取り除いていきます。
SRP(スケーリング・ルートプレーニング)
歯周病が進行すると、歯と歯ぐきの間に「歯周ポケット」とよばれるすき間がつくられます。この歯周ポケットの中には歯ブラシが届かないため、放置しておくとさらに歯周病菌が増殖して、歯周病の進行を加速させてしまいます。
SRPはこの歯周ポケット内にたまったプラークや歯石を、キュレットという専用の器具で丁寧に取り除いていく治療です。SRPは非常に繊細な作業なため、数回にわけて処置をおこなっていきます。
再評価・メンテナンス
一連の基本治療が終わったら歯周病検査を再度おこない、治療によってどの程度病状が改善されたかを評価していきます。
一定の改善がみられた場合は、数カ月に一度の定期的なメンテナンスをおこないながら、歯周病の予防・再発防止に努めていきます。
歯周外科治療
基本治療であまり改善がみられない部位に対しては、必要に応じて歯周外科治療をおこなっていきます。
歯周病を予防するために
歯周病はお口の中にひそむ歯周病菌によって引き起こされる感染症です。したがって歯周病を予防するためには、その歯周病菌をできる限り減らしていくプラークコントロールが重要となります。そのプラークコントロールには皆さんが毎日おこなうホームケアと、歯科医院で定期的におこなうプロフェッショナルケアの2種類あります。
ホームケアの中心となるのが歯磨きですが、どんなにしっかり歯磨きをおこなっても、細かいすき間の多いお口の中にはやはり磨き残しがでてしまいます。そこで取り残した汚れを、専門的なクリーニングによって定期的に取り除いていくのがプロフェッショナルケアです。
歯周病の予防、再発の防止にはこのホームケアとプロフェッショナルケアのどちらも欠かすことができません。当院では皆さんのお口の状態や生活習慣などを考慮しながら、お一人おひとりに適した歯周病の予防プランをご提案しております。